2013年4月26日金曜日

チュニジアにおける入籍儀式

40代は人生の岐路と言われているが、その生き方は人によって様々である。それは、仕事のみならず、結婚や夫婦の関係においても言えるであろう。 

夫婦によっても異なるかもしれないが、一般的には、30代から40代の夫婦の関係は、20代の新婚時の男女の関係とは異なり、配偶者が人生におけるかけがえのないパートナーであることを認識する頃ではなかろうか。子供がいる家庭においては2者間の関係のみならず、3者間の関係という家族の関係を構築している時期でもある。

しかし、最近は、平均寿命が伸びてきていることもあり、人によっては30代後半や、40歳を超えても新たに配偶者と出会ったり、新たに家庭を築いたりすることも少なくない。これは日本のみならず、世界中で起こっている傾向であると言えよう。

その例を象徴する出来事として、本日、欧米人である友人とチュニジア人の女性の入籍儀式に出席した。友人は私と同世代の40代前半で、女性は20代である。いわゆる“年の差結婚”であるが、二人の間にさほど違和感はない。その儀式はチュニス市内にある『公民館(
Bureau de lEtat Civil a la Municipalite)』で行われた。伝統的なモザイク画に包まれたアラブ風の美しい建物である。儀式はイスラム教の伝統的な方式に従い、家族と数人の友人に囲まれて行われた。ちなみに、この儀式はチュニジアの法律に基づいた公式なセレモニーである。


ご参考までに、チュニジアの法律においては非イスラム教徒の男性”はイスラム教徒の女性”と結婚することが出来ない。チュニジアの女性と入籍する為には、男性がイスラム教に改宗する必要があり、私の友人も例外に漏れず儀式の前に改宗している。一方で“イスラム教徒の男性”は“非イスラム教徒の女性”と結婚する事が可能である。男女の間で同じ権利が与えられていないのが実状である。

入籍の儀式では、
ムフティーと呼ばれるイスラム法官を仲介者として、皆に見守られ中、テーブルに向かって、左側に新郎とその証人(友人の男性)、右側に新婦とその証人(父親)が座り、儀式が行われた。


まず、ムフティーはコーランのファティハ(開端)と呼ばれる最初のスーラ(章)を暗唱した。仏教のお経に聞こえなくもないファティハであるが、参列した友人の一人のモロッコ人によると、唯一の神であるアラーに対して我々が正しい道に導かれるべくお祈りをしているという。暗唱後、ムフティーが、新郎と新婦に向かって問いかけた。アラビア語なので理解ができなかったが、おそらく『イスラム教の教えに従い夫婦となることを誓うか』といった内容であったと思われる。新郎と新婦は頷いて確認の返事をしていた。そして、白い箱が開封され、指輪が出され、新郎と新婦の間で指輪の交換が行われた。イスラム教の儀式なので我々にとっては何が起こるか分からず、多少サプライズであったが、これで二人は正式に夫婦となった。皆に祝福されて満面の笑顔の新郎と、ほっとしたようなブーケを持った新婦の顔が印象的であった。

儀式の後は、チュニジアの伝統的なお菓子や飲み物で祝福を行った。当然ながらアルコールはご法度である。家族や友人同士で談笑をしたり、写真を撮ったりして新たな夫婦を門出をお祝いした。

実はチュニジアでは外国人がイスラム教徒の女性と結婚するのは容易ではない。結婚するまでに超えなければいけない幾つかの障害が伴う。宗教(改宗)、家族や親族の同意、数々の法的手続きや書類提出の問題である。私はこのカップルが、様々な問題を時間をかけて解決し、最終的に結婚まで辿り着けたことを知っていた。また、新婦とも何回も会っていたので、入籍の儀式が無事に終わって本当に嬉しかった。

以前、私は、友人が結婚を決意した際に、彼と結婚について話し合ったことがある。友人は彼女と出会ってから早い時期に結婚を決めたので、私は同世代の友人として、もう少し様子を見て決断をした方が良いのではと促した。少し僭越だったかもしれないが、異なる宗教間の結婚であり、早急な感情で結婚を決めて、後悔する事がないか心配だったからである。

しかし彼の態度ははっきりしていた。理由は結婚しないで後悔するよりも、今の自分の気持ちを大切にしたいとのことであった。極端に言えば、人生とは何が起こるか分からず、明日の命もどうなるか判らない中で、このような素晴らしい機会を失いたくはないという。私はこの言葉に強く共感した。

四十路とは人生の折り返し地点である。私の場合は、20代、30代において会社で多忙な時間を過ごした人生であったが、40代になり、人生に対する考え方が変わった。残りの人生を考えた場合に、どうしたら後悔しないか強く意識するようになった。いわゆる残りのキャリアや人生、そして死を意識した『逆算の考え方』である。一般的には40になった時点で働ける年数は20年程度しか残されていない。我儘な生き方であるかもしれないが、死ぬまでに異なる環境で働き、もっと知らない世界を見たいと思った。アフリカに移住したのも後悔しない人生を歩む為である。但し、家族に対する養育と子供の教育の義務は伴うことを前提としている。

私の友人も40代というステージにおいて、自分の残りの人生を考える上で大きな決断を行ったという事であろう。今からであれば家族を増やすこともできるし、まだまだ夫婦で多くの素晴らしい時間を過ごすことができる。是非、二人には異なる文化や習慣、宗教を越えて、今後の人生において幸せになって欲しいと切に願っている。


【参考資料】
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%BC%E3%83%A9_(%E3%82%AF%E3%83%AB%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%B3)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%96%8B%E7%AB%AF_(%E3%82%AF%E3%83%AB%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%B3
)
http://tunisia.usembassy.gov/marriage-tunisia.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A0E%83%95%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BC

1 件のコメント:

  1. 初めまして、僕も同じような状況です 犯罪証明を求められていますが
    日本の場合、個人情報ではなく 警視庁の機密情報で特別申請が必要と言われました。どのようにして取得したのですか  教えて頂けますか

    返信削除