2013年5月1日水曜日

チュニジアのモザイク画(塗り替えられた歴史)

ローマの住居から見える風景
(奥が大統領官邸と地中海)
カルタゴの海沿いにある大統領官邸やアントニヌスの公共浴場より少し内陸側に登ったところに、ローマ人の住居地跡がある。その高台からの見晴らしは素晴らしく、かつてのローマ人が最高のロケーションを確保していたことがわかる。

その丘を更に少し登るとローマ劇場の遺跡があり、少し離れたところには円形闘技場の遺跡がある。かつて、ローマ人が娯楽好きであった生活が容易に想像がつく。また、住宅近くには、小規模な貯水場も確保していたことから、ローマ人は公共浴場に行くのみならず、自宅にも浴槽があり、風呂好きな民族であったようだ。


そのローマ人の住居跡であるが、嘗ては、ローマ人のみならず、異なる民族も住んでいたという。そこにはポエニ人(ベルベル人とフェニキア人の融合)、ヴァンダル人、ビザンチン人が住み、侵攻した民族が破壊と建設を繰り返して、侵略した土地の上において歴史を塗り替えていった。

現在は観光地になっているそのローマ人の住居跡であるが、本日、そこに入ると、何処からともなく現れた年配の男が話しかけていた。その男によると、その住居跡には異なる文化のモザイク画が存在し、民族によって特徴が異なるという。その男の話が興味深かったので案内をお願いした。

ローマ時代のモザイク
(ボリエールの別荘にて)
まず、その案内人が入口の奥にある洞窟に案内してくれた。薄暗い洞窟の中には、数々のモザイク画が無造作に立掛けてあった。考古学者が掘り起こしたものであるという。宝の山がそこら中に転がっているのには驚いた。

そのモザイク画は土埃を被っていたが、案内人が水をかけてくれ、そのモザイク画の様子を見ることができた。

ローマのモザイク画は幾何学的な模様であり、その模様は動物や草花等の自然を対象とする模様が多いようだ。ローマ帝国BC44よりカルタゴの再建をおこない、その支配はヴァンダル人に倒される439年まで続いた。モザイク画はその間に建設された住居の床である。

ヴァンダル人のモザイク
(卍の記号が記されている。)
次に案内人がヴァンダル人(439年~533年)のモザイク画を見せてくれた。興味深かったのは、『卍(まんじ)』の記号が記されていたことである。案内人によると『卍』の記号はインドの太陽のシンボルであるという。後で調べたが『卍』は古代のインド・ヨーロッパ語族の共通の宗教的なシンボルであったようだ。ナチスが利用した『卐(ハーケンクロイツ)』はこの『卍』の記号を逆にしたものである。ヴァンダル人とは北ヨーロッパから来た民族であり、ヴァンダル人とゲルマン民族が重なり合って見えてしまう。

ビザンチン人のモザイク
更にビザンチン人(東ローマ人)(534年~646年)のモザイク画も見せてくれた。ビザンチンのモザイク画の特徴は複雑な模様にあり、しかも左右対称の絵柄であるという。ビザンティン帝国にとってモザイクは重要な文化であり、今までのローマ人やヴァンダル人のモザイク画が更に発展した形であるのがわかる。

洞窟を出て更に進み、かつてのポエニ人の住宅の遺跡を案内してくれた。その住宅の面影は1か所しか見られないという。ローマ人は嘗てのポエニ人の街を徹底的に破壊し、その上に、新たな都市を構築したのは有名な話である。案内人によると、ポエニのモザイク画はローマのそれより約80cm下の断層に埋まっていたという。考古学者がポエニ人の住居を掘り起こした時は大発見であったに違いない。


ポエニ人の住居の跡(床のモザイク画)

写真の如く、ポエニ人のモザイク画は朱色の下地に白い斑点があるのが特徴のようだ。これは先日、ボン岬にあるケルクワンににてポエニ人の住宅を見た際にもほぼ同様の模様であった。

その後、丘を登り、草むらの中に進み、ローマ人、ビザンチン人のモザイク画が実際に土壌の上に存在する場所に連れて行ってくれた。


今後は丘を下り、ローマ人の住居を見た。そこは『ボリエールの別荘』といわれる屋敷の後であるが、列柱回廊や、中庭、床のモザイクが残っていた。モザイク画は動物や花や草、馬の絵柄が多かった。数々のローマ神の彫刻も残っていた。

購入したローマ時代の
本物?のコイン
最後に案内人が教えてくれた。土砂降りの大雨が降った後には、嘗て使われていた貨幣(コイン)が出土することがあるという。

そして、その案内人はポケットから、幾つかのコインが取り出し、私に見せてくれた。全て異なる表記や形状のコインである。手に取って観察をしてみたがどのコインもくすんだ色をしており、殆どは形状がデフォルメしていたり、文字が読めなかったりする。しばらく、眺めてみたが、どう見ても本物にしか見えない。これらは案内人が大雨の後に見つけたコインであり、私に対して特別に売りたいという。

価格交渉の上、そのコインの一つを買った。くすんで見にくいが、嘗てのローマ帝国の皇帝と、その裏にはその皇帝が馬の乗った姿が映し出している。本物であれば、ローマ帝国時代の1600年前から2000年前のコインということになる。

コインを買い、子供の頃に玩具を買った気持ちになった。嘗てのローマ帝国の銅のコインである。ロマンを感じるには十分すぎるほど希少な玩具ではなかろうか。

【参考資料】
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%8D
http://en.wikipedia.org/wiki/Mosaic
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%82%B1%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%84

2 件のコメント:

  1. ローマ時代のコイン、本物なら凄いね。

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  2. 本物のコインの売買は禁止されているので、偽物ということにしましょう。

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