2013年12月16日月曜日

日中関係を考えてみる

『21世紀は中国の時代』と呼ばれて久しい。過去数十年間における経済成長は目覚ましく、現在、アフリカで大きな存在感を示している国である。しかし、昨今、日中間の関係が悪化していることに強い懸念を覚えている。

最近、中国に長い間住んでおり、中国の政治経済に詳しい友人と食事をする機会があったが、彼曰く、現在、中国国内では様々な問題を抱えており、その国家運営は一筋縄でいかないという。

その友人によると、中国は雇用の確保を目的として、社会の安定化を計るためには、経済成長は不可欠であり、2008年のリーマンショック以来、内需拡大によって、その目的を達成しようとしているという。その結果、中国政府は全国の地方行政や国有企業に巨額の資金を投入し、それらの資金がインフラ整備に回された。そして、そのうちのかなりの資金が投機に回り、不動産バブルが発生しているようだ。

現在、北京の平均月収は5000元(約8万円)であるが、平均の土地価格は平米あたり、4万元弱(約60万円)まで上昇しているという。50平米の土地が平均で3000万円もすることになり、平均年収の30倍以上の価格になっているという。庶民にとってみればマイホームは夢の夢となっているようである。また、環境問題や大気汚染が深刻化しており、北京の出身者でさえ、地方に脱出する人が増えているとのことであった。

現在、中国政府は引き締め政策を行っているようだ。バブルが崩壊しないように軟着陸させようというのが本音であろう。今後は高成長がなくても、社会を如何に安定化させるかいうのが大きな焦点と思われる。しかし、以前のような高成長がなくても、中間層が育ってきている中国は国家運営が行うことは出来るかもしれない。

一方で、最近の中国政府による言論の引き締め傾向に対して国民は不安を覚えているという。習近平の毛沢東主義への回帰する姿勢も様々な波紋を呼んでいるようである。このような背景もあり、共産党が国民の目を国外に向けさせる為にも、日本に対する強硬な姿勢を崩さないのは否めない事実であるようだ。

これらの社会不安の解消と軟着陸が出来なかった場合には、『第二の文化革命』の再来を予想する悲観論者もいるようだ。文化革命の起こった背景には、全土に及ぶ飢餓や、ソ連との関係悪化等の社会不安並びに外交上の問題があった。文化革命によって、ソ連の技術者は撤退し、また、教育の低下により中国における技術的な発展は10年間も停滞した。中国人の中には今回の日本との外交関係の悪化が、当時の文革前のソ連との関係を彷彿する人もいるようである。また多くの良識ある中国人は日本との良好な関係を望んでいるようだ。

振り返ってみると日中の関係はつい最近まで非常に良かった。1972年の 日中国交成立以来、これだけの年月をかけて構築した日中間が悪化するのは残念でならない。私の幼少の頃は上野動物園のランラン、カンカンに代表されるように、日本と中国の外交関係は希望に満ちていた。個人的にも、80年代には、交換留学制度により、実家に中国の留学生がしばらく泊まったこともあり、彼とは30年近く、家族ぐるみの付き合いである。

また、私が以前働いていた商社の仲間は、80年代、90年代に中国にて語学研修を行い、その後、中国に駐在をしているものも多い。その商社は中国語を話せる職員が500名以上もおり、中国にどっぷり浸かっている企業であるが、同期の友人の結婚式に中国人の友人がわざわざ東京まで駆けつけて、中国語で祝福の歌を披露してくれたこともあった。

昨今の反日運動で多くの日本人が中国に対して気持ちが離れたのは事実だろう。この度、良識ある多くの中国人がいることを忘れてはいけないと思った次第である。

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