2013年12月25日水曜日

ギリシャ経済危機

近代的なアテネの空港に到着し、ダウンタウンのホテルに向う途中の重厚な高速道路のレベルには驚かされる。途中のトンネル内ではまるで首都高を走っている錯覚に陥いるほどである。これらの比較的新しいインフラは2004年のオリンピック時に整備されたものなのだろうか。

繰り出した街ではクリスマス前の街並みが華やかであり、ライトアップされたパルテノン神殿が眩しい。店舗でもギリシャ人のセンスの良さを感じる。雑貨や洋服は世界中から良いものを集めている様子がわかる。通り過ぎる人々もファッショナブルである。食事もふんだんにレモンと蜂蜜を使ったサラダや、塩トリフを隠し味に使っているパスタ等、高いレベルを感じた。何よりも人々が意外と落ち着いている様子に安堵した。これがつい最近まで債務不履行(デフォルト)する可能性があった国なのか疑いたくなる。

一方で、街をよく観察してみると、不安定な要素も垣間見られる。街中のいたるところでスプレーで吹きつけられた落書きがあり、警察の数も多い。街角には必ずと言っていいほど、宝くじが売っている。経済難がゆえに一攫千金を夢見ている人々が多いのか。実際、人々は買い物を楽しんでいるものの、ほとんどセール商品しか手をつけていない。高級店では人がまばらである。

ギリシャは2009年の末から、経済危機に見舞われている。信用不安から国債が暴落し、株価が大幅に下落した。欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)は緊縮措置や民営化を求めており、政府は痛みを伴う改革を進めようとしているが、国民との綱引きは現在でも続いている。2014年には再び財政不足に陥る可能性もあり、未だに予断は許さないという。

この経済危機は複合的な要因によるものだが、長年に及ぶ、身の丈に合わない年金制度、公共事業拡大、公務員の雇用拡大、汚職等による徴税能力の低さが主な原因のようだ。前述した高速道路や壮大なアクロポリス美術館も過剰投資に見えてしまう。公務員は労働人口の25%に達するという統計もあり、日本の5%程度と比較して、大きな政府であることは明白である。また、安定議席を確保していないという理由もあるだろうが、危機にも関わらず、指導者が断固としたリーダーシップを発揮できず、総選挙によって国民に真意を問うような状況に陥っている。1998年のアジア危機時に韓国がIMFの融資を受けた際に、金大中が国民に緊縮財政の必要性を説いた対応とは大きな違いがある。

一方で、この経済危機はユーロ通貨制度の構造的な問題によるものと指摘する経済学者もいるようだ。ユーロ加盟国は独自の金融政策を打てず、財政支出が増やせない為に景気浮揚策は乏しい。更に、本来は競争力の弱い国は貨幣を切り下げるが、それが不可能な為、資産価値上昇により金利が上昇する傾向にあるという。今回の問題は低金利で調達した欧州北部の資金が、高金利を求めて欧州南部に流入(キャリアトレード)し、バブルが発生した為と指摘している。単一市場内での競争力の格差が問題の本質であるという。

古代ギリシャにおいて、共同体であるポリスでは自足自給を目的としており、あくまで貨幣とは等価関係の物を交換する為の媒体に過ぎなかった。それが現在では誤ったグローバリズムや、行き過ぎた資本主義や金融化により、貨幣が投機的な目的で利用されている。ギリシャにおいては、ポリスの理念に従い、身の丈に会った実体経済の確立が経済危機の回避方法といったところなのだろうか。

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