2013年3月24日日曜日

チュニジア人の結婚観について

春が訪れた。チュニジアでは暖かくなるにつれて結婚シーズンが始まる。チュニジアにおける結婚シーズンのピークは夏である。私のヨーロッパ人の友人もチュニジア人と結婚予定の者が2人いる。

過去に2回ほどチュニジアの結婚式に招待されたことがある。花嫁がウェデイングドレスから、伝統衣装に衣替えをする姿は洋の東西問わず華やかであった。また、周りの親族や友人がインディアンの叫びのように甲高い声を挙げて祝う姿や、優雅に伝統的な踊りをする人々が印象的であった。しかし、そのあまりにも大音量の音楽に閉口した。隣の人の話声も聞こえないほどであった。

一般的にチュニジア人の結婚式に関連する儀式は、複数回開催されるようだ。伝統的な結婚式は結納や前夜祭の様な儀式も含め新婦側で5回、新郎側で2回といわれている。その費用は通常、新郎持ちのようだ。その費用は場所によって様々であるが、(通常は)一生に一回のイベントであり、盛大に行われることが多いという。また、チュニジア人は(表だって)お祝いを現金で受け取る習慣がなく、結婚式を挙げる為の資金負担は相当であるという。

しかし、日本でも不景気が長引くに連れて、いわゆる地味婚が増えたり、結婚の時期を伸ばしたりするケースがあるが、最近のチュニジアも同じような傾向にあるようだ。チュニジアは若者の失業率が高い為に、若い時期に結婚がなかなかできないという事情があるようだ。従い、お金がある年の離れた男性と結婚する女性も珍しくはないという。

さて、それではチュニジア人は一般的に何歳位で結婚するのであろうか。Wikipediaの情報しか見当たらないが、2007年の『National Family and Population』による調査によると、男性の平均が33歳、女性のそれが29.2歳であるという。この定義と調査方法が解りかねるが、初回の結婚の平均年齢としては若干高いような気がする。しかし、女性による高等教育の参加が欧米並みのチュニジアにおいて、上述した理由より、晩婚が進んでいるのは間違いないであろう。

また、結婚は法律的に本人の承諾が必要であるが、特に地方においては、未だに本人の合意の元とはいえ、家族を通じて相手が選ばれる事があるようだ。結婚の条件も職業、出身地、裕福か否か、また女性が貞操が守られているかが大きな比重を占めるようであり、本人同士の愛情よりも条件が優先されることもあるという。更に、本人が相手を選んだとしても、家族の承諾を得なければ結婚をするのは難しいようだ。

先日、友人のパーティーに来ていたチュニジア人の男女の若者達の結婚観を聞いたところ、女性の場合、このようなチュニジアの伝統的な仕組みに愛想を尽かしたので、結婚するのであれば外国人が良いという。しかし、外国人との結婚で譲れない条件について聞いたところ、旦那がイスラム教に改宗する事であり、自らが他の宗教に改宗するつもりはまったくないという。やはり、チュニジア人にとっては宗教は基本的な価値観であり、本人達も伝統的な仕組みからは抜け出せないようである。

また、その若者達によると、チュニジアは若者の離婚が多いという。お互いの家族間の些細な意見の相違で離婚に発展することが多々あるという。後でチュニジアの離婚について調べてみたところ、あるサイトによると、この数年で結婚した若者の離婚率は30%又は場所によってはそれ以上に昇るという。その離婚は女性から申し込まれることが多いようだ。

更にチュニジアは男性優位社会であり、家の中では父親が一番偉く、母親も対外的には娘よりも、息子を大切にする傾向があるというのは驚いた。当然ながら家族によっても価値観が異なると思われるが、一昔前の日本の男性優位社会を見ているようである。現在、日本の男性は草食系と言われ、20代の女性の平均給料は男性のそれを上回っていると言われる中、女性の力が増している。チュニジアは現在の日本とは状況が少し異なるようである。

ちなみに、私の隣のアパートの家族は喧嘩が絶えない。父親が母親を怒鳴っているのがよく聞こえ、隣人として心配している。母親もやり返しているようであるが、やはり、父親の威厳が強いようである。子供もいて、色々な親戚が出入りしているので母親が孤立するような事はなさそうなので少し安心であるが、聞こえる怒鳴り声を聞く限り、その父親の横暴さは巨人の星の『星一徹』なみである。

前述したチュニジア人の若者達に対して、その隣近所の父親が母親に暴力を振るったとして、私が警察を呼んだらどうなるのかと質問したところ、警察はまったく相手にしないはずとコメントしていた。これはあくまで個人の問題であって、警察が家庭の中に介入する事は皆無であるという。基本的には日本の警察も同じようなスタンスであろう。ちなみに、アメリカに住んでいた際に、隣近所の旦那が度々奥さんに暴力を振るっており、近所の人が警察に通報したところ、旦那が逮捕されたことがあった。アメリカは家庭の問題であっても、基本的な人権を踏みにじるような事があれば警察が家庭に介入する。ここは西洋の考え方とイスラムや日本と考え方が大きく異なるようである。

チュニジアの近所の例を見ても、結婚に関する問題は東西問わず、普遍的であるようだ。先日、川北義則さんの本を読んだところ、ドイツの劇作家のグラッペによると『女は深く見、男は遠くを見る』という言葉があるようで、男女の人生に対する焦点の見方は異なるという。ある意味で男と女が理解し合うのは難しいということのようだ。

それが事実だとすれば、チュニジアの若者の男女には、相手に過度な期待を持たないのが結婚の長続きの秘訣だとアドバイスするべきということであろうか。結婚シーズンが始まる時期に少し寂しすぎる気もするが。
 
【参照資料】

http://khedija.blog.fr/2012/12/08/early-marriage-the-case-of-tunisia-15295998/
http://www.awid.org/Library/Marriage-and-Divorce-in-Tunisia-Women-s-Rights
http://en.wikipedia.org/wiki/Culture_of_Tunisia#cite_note-87
http://www.tunisia-love.com/woman-in-tunisia.htm
http://khedija.blog.fr/2012/12/08/early-marriage-the-case-of-tunisia-15295998/
 

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