2013年3月9日土曜日

アフリカの『起業家(アントレプレナー)』

アフリカ大陸のトップ企業』というテーマで紹介したが、アフリカ大陸全体のGDP(2011年)は1.87兆ドルであり、仮にアフリカが一つの国であるとすると、世界で9番目の経済規模になる。これは同年のロシアのGDP1.86兆ドルや、インドの1.85兆ドルを上回る。一般的な日本人のイメージとは異なり、アフリカは立派な経済大陸”なのだ。
 
このようにアフリカの経済規模は拡大している。しかし、米国やインド、又は少し前の日本のような、一代で財を成すような“起業家”の話をあまり聞いたことがない。また、『Toyota』、『Sony』、『GE』、『Google』や『Facebook』のようなブランドを誇れるようなグローバルな企業が殆ど存在しないことも事実である。しかし、現在、アフリカにおいては、人口の急増や中産階級の拡大によって、様々な企業が誕生し始めている。これらの企業は国営企業や外資によるもののみならず、現地の“起業家”が立ち上げたものも多数ある。
 
その典型的な例は、アフリカのなかで著名な起業家である『モハメッド・イブラヒム(通称:モ・イブラヒム)』であろう。モ・イブラヒムはスーダン人であるが、1990年代に『セルテル社』を創設し、東アフリカの24国を中心とした携帯電話会社を成長させた。アフリカでは国営企業や欧州等の外資との合弁会社が多いが、セルテル社はそれらの資本関係を持たず、独立系の企業として事業を拡大したという。同氏は、2005年にクウェートのMTC社(ブランド名:Zain)にセルテルを売却をして巨額の利益を得た。その後、『モ・イブラヒム財団』を立ち上げ、アフリカのガバナンスを向上をする為の活動を行っている。

これらの起業家は、自らの富の拡大を最優先にしているのではなく、アフリカ社会の向上や社会への還元を目的としている人が少なくない。

先日、サブサハラの某国における若い起業家と電話で話をした際にも、アフリカ社会の変革の“強い意志”を感じた。仕事の内容には触れるつもりはないが、その企業家の高潔な考え方に触れ、感動したので書き留めておきたい。

その起業家の年齢は30代中頃であろうか。元々エンジニアリングと経営学を海外で学んだ後、サブサハラの某国で、インターネット・サービス・プロバイダー(ISP)を立ち上げたという。某国において、初の『通信料固定価格』、『24時間電話対応』、『無料の機器提供や据付』のサービスを開始したそうだ。彼は、海底ケーブルの帯域を確保する為に、親や自らの資産を担保として差出し、必要な資金を調達した。通常、銀行はスタートアップ企業に対しては貸し出しを行わないが、彼はビジネスモデルを説明するとともに、その社会的な重要さを銀行に説いたという。

彼はISPの事業を行った際に、アフリカ人が欧米の同世代の人間と競争する為には、ブロードバンドの普及が欠かせないと確信したそうだ。(現在、アフリカの多くの国のインターネットの普及率は5%以下である。)彼の主張は、アフリカ人の多くは、アメリカ人や日本人が当たり前に利用しているテクノロジーに触れることができず、それが故に競争で不利な立場を強いられているということである。アフリカ人が先進国の人間と同じ環境を与えられれば、必ずや世界で競争が出来ると信じているという。現在、彼は某国の政府から周波数を買取り、LTEを基盤としたモバイル・インターネットサービスを立ち上げ、デジタルデバイドの解消を目指している。

電話で話したその起業家の迫力は凄いものがあった。また彼はアフリカにおける社会変革の為に事業を行っているという“信念”があるので、その目的にぶれが無い。『今まで話したのが自分のストーリーだ。今度は貴方のストーリーを聞かせてほしい。日本人の貴方は何故アフリカで働いているのか。』起業家にとってビジネスの交渉は、一対一の人間のぶつかり合いの場であるようだ。

以前、社会起業家で有名な山口絵理子さんの『裸でも生きる』という本を読んで感動したことがある。バングラデッシュにおいて25歳で起業した経験を綴った本である。
 
『他人にどう言われようが、他人にどう見られ評価されようが、たとえ裸になってでも自分が信じた道を歩く。それが、バングラデシュのみんなが教えてくれたことに対する私なりの答えだった』と述べている。

山口さんも、アフリカの起業家の彼にも共通点がある。自分の信じた道を歩んではいるが、それが決して自らの為ではなく、途上国の人々の可能性を信じて行動していることである。その信念をライフワークとし、自らリスクを取って生きている。
 
そのアフリカの起業家の高潔な考え方に触れ感銘を受けた。今後、アフリカは彼の様なリーダーに引っ張られ成長していくであろうと確信している。 

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