2013年1月24日木曜日

海外プラント業界の“侍”たち

アルジェリアの東部のイナメナスのガス施設にて起こった人質事件は最悪の結果となった。今日まで、アルジェリアの石油・ガス産業に多大な貢献をしてきた日揮の方が犠牲になってしまった。本当に残念でならない。犠牲になった方々には心よりご冥福を祈りたい。

アルジェリアで日揮は1960年代後半から製油や天然ガスなどのプラント建設に携わってきたという。私がかつて勤めていた商社は、歴史的にも日揮と付き合いが深い会社であり、同社のアルジェリアにおける突出した貢献度は常に聞かされていた。私のかつての直属の上司は80年代に3国間取引で旧ソ連のパイプをアルジェリアに輸出したこともあり、取引先である日揮の方とは懇意の仲であった。

入社数年後の90年代半ば頃だろうか。私はアルジェリアで活躍した同社の方々と何回か打ち合わせをさせて頂いたが、その方々の海外の現場で鍛え上げられた独特の雰囲気には圧倒されたものだ。砂漠でスクラッチから建設をするプラントはまさに自然との闘いであろう。50度に及ぶ気温、道路建設、住居作り、電気敷設、水の確保等、想像するだけでめまいがする。

当時のアルジェリアは内戦の真っ最中であり、日揮も含めて日本企業は同国から撤退せざるを得ない状況であった。スーツを着ていた日揮の方々であるが、本来ならば海外で現場の仕事をしている方が生き生きとしているのだろうと感じた。

ちなみにアルジェリアにおける日本人に対する評判をすこぶる良い。2005年にアルジェリアに通信の仕事で訪問した際には、取引先から日本人ということで大歓迎された。『日本人は勤勉で誠実であるから信頼できる』という。『日揮を始めとした日本企業がアルジェリアを大切にしてくれたから』というのが理由だそうだ。現在の私のアルジェリア人の同僚も、最初に会った日に『アルジェリアにとって日本は特別な国である』と話してくれた。これも日揮の方が築き上げた日々の積み重ねの結果に他ならない。

私はインフラやプラント関連の仕事をしてきており、海外の方から日本人について色々な意見を聞くことが多い。しかし、今まで、日本人と仕事を共にした海外の方から、日本人の悪口を聞いたことはない。利益一辺倒の考え方とは異なり、日本人がその国の発展を思い、国際協力という使命感と共に仕事をしてきたからではないか。一部の国とは異なり、現地の人を大切にし、技術移転を行ってきた結果であると思う。

アルジェリアに思いを馳せる日本のプラント業界の人は多い。何故、アルジェリアの事を想い、そして貢献してきた同胞がこのような悲惨な運命にあわなくてはならないのか。日本人がアルジェリアを搾取しようとする意図などあるわけがない。卑劣な手段を使ったテロリストに対して改めて憤りを感じる。
 

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