2013年1月25日金曜日

The Quest (エネルギー安全保障)

先週の1月16日に勃発したアルジェリアにおける人質事件で、石油市場は反応した。18日のニューヨークのNYMEX(マーカーンタイル取引場)では石油価格が1.25ドル上昇し、95.49ドルになったという。石油の価格は様々な要因によって変動する。石油の需給のみならず、国際政治、紛争、金融政策、テクノロジー等様々である。

著名な石油専門家ダニエル・ヤーギン氏が著述した『The Quest』はまさに、エネルギーを安全保障や近代社会の発展という視点で、幅広い議論を展開している。昨年の秋にドバイの空港で買った本であるが、やたら長い本あった為、途中でほったらかしていたが、最近ようやく主要なところを読み終えた。面白い内容と思った一部を紹介する。

ヤーギン氏は冒頭にて世界でおきた二つの事象を紹介している。まず、2011年3月11日に発生した『東日本大震災』である。地震やそれに伴う津波によって、東北のインフラは壊滅的な打撃を受けた。津波は福島第一原子力発電所に及び、その後の発電所の事故が日本における電力供給に大きな影響を与えた。現在、原子力発電力の政策等については世界の注目が集まっているところである。

その数か月前に北アフリカでは全く違う危機が起こっていた。『ジャスミン革命』である。チュニジアのSidi Bouzidという町で、ある青年が警察による嫌がらせに対して焼身自殺事件を起こしたことに端を発し、反政府デモが全国に拡大した。その後の民主化の動きは、携帯、電話、メール、更には、Facebook、Youtube、Twitter等のソーシャルメディアを通じて人々に伝送されていった。2011年1月14日、ついに23年間続いたベンアリ政権は崩壊する。更に民主化運動は北アフリカや中東に拡大し、リビアでは市民戦争に発展し、カダフィー政権も終焉を迎える。リビアの石油生産が激減したのは記憶に新しいところである。

この二つの出来事は、地球の異なる場所で起きた無関係の事象に見えるが、エネルギー市場においては関連性が深いとダニエル・ヤーギン氏は指摘している。私は2011年5月の1週目と2週目にチュニジアの革命の中心地と、東北の被災地に訪問し、二つの場所における危機の余韻を感じ取った。現在のグローバル社会は人や、情報、経済を含めて全て繫がっており、お互いに様々な影響を与えているのは間違いないであろう。

ヤーギン氏はアルカイーダの戦略についても述べている。1996年にOsama bin Ladenは『聖地を占領する米国人に対する宣戦布告』にて、『中東の石油設備を攻撃するように』と主張。アメリカの経済を破壊する為である。2005年にはアルカイーダNo.2であるAyman al-Zawahiriが、ジハード(聖戦)の民兵に対して『攻撃の対象はムスリムが盗まれた(外資系)の石油設備に限定する』と述べている。2005年9月にアルカイーダがサウジアラビアの石油施設を襲撃した際には、攻撃対象である各国の外資系の石油設備に関する詳細な地図や図面が残されていたという。大変残念であるが、今回の『アルジェリアの外資系(BP)ガス設備』に対する襲撃も、この戦略の延長線上にあるのかもしれない。

最後に、ヤーギン氏はエネルギー安全保障の大きな柱は『節約』であると指摘している。エネルギー効率の活用はエネルギー安全保障を確立する上で重要なカギであると強調している。これは乗り物や機械の省エネについてのみならず、人々の日々の行動を指す。ヤーギン氏は本の中で、この行動について『Mottainai(もったいない)』という日本語を使って説明している。日本でお土産でもらった包み紙を何回も利用して節約することを紹介している。英訳は『Too precious to waste』としていた。
 

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