2013年3月1日金曜日

アフリカ大陸のトップ企業

私が社会人になったのは90年代の前半である。当時、既にバブルは弾けていたが、未だにその余韻が残っていた時代である。金曜日の夜中は、六本木や赤坂で先輩と飲んだ後に、自宅に帰る為に何時間もタクシーを待たされたということが多々あった。町のイルミネーションは豪華であり、若い女性達が派手なファッションを競っていた華やかな時代であった。

私が最初に勤めた会社は総合商社であるが、その頃の日本経済は未だに売上げが重視されていた。海外のプロジェクトにおいては、ゼネコンの代わりに現地の客先に口利きをして、ゼネコンから口銭(コミッション)を得ると、社内的にゼネコンの売上金額分も計上をするという仕組みがあった。これを『代行売上』と呼んでいた。今、考えると、取引に絡まないプロジェクトに対して、売上を計上するという奇妙な習慣であったが、利益とは別に売上を重視することを象徴する仕組みである。


その頃、総合商社ではほとんど実態のない取引も含めて、20兆円近くの売上げを競っており、“世界一”であるなどと豪語していた経営者がいたのを覚えている。



本日、『JeuneAfrique誌』が発行する『アフリカのトップ企業500社』という特集を購入した。アフリカ企業500社の売上高の順位があったので見てみた。売上金額をベースで比較しているのは、まるで日本のバブルの時代を見ているようである。国営企業が未だにあるので時価総額で比較できないという理由もあるだろうが、この売上げによる指標は、経済成長をしている国の象徴である気がしてならない。これから高度成長期に入っていくアフリカ大陸と、長い間成長の糸口を掴めない日本企業を比較してみた。

ご参考までに、現在のアフリカ大陸の人口は約10億人である。これは世界の人口の約15%にあたる割合である。そしてアフリカ大陸全体のGDP(2011年)は1.87兆ドルであり、仮にアフリカが一つの国であるとすると、世界で9番目の経済規模になる。これは同年のロシアのGDP1.86兆ドルや、インドの1.85兆ドルを上回ることになる。一般的な日本人のイメージとは異なり、アフリカは立派な経済大陸であることがわかる。

まず、企業価値検索サービス『Ullet』というサイトを利用して、日本の売上高順位100社のリストを見てみた。日本の企業の売上はトヨタ自動車が断トツのトップで18.5兆円、JXホールディングが10.7兆円、NTTが10.5兆円、日立製作所が9.6兆円、日産自動車が9.4兆円である。ちなみに日本の売上げの百番目の企業はJR西日本で1.2兆円である。

一方で『アフリカのトップ企業500社』に載っている企業は、一位がアルジェリアの石油会社であるSonatrachであり、売上を円換算すると6.2兆円である。これは日本の東芝(売上9位)とほぼ同額である。2位以下は3兆円以下の売上の企業である。アンゴラの石油会社Sonangol、南アの石油会社Sasol、携帯会社のMTN、総合企業のBIDVESTGroup、電力会社のESKOMが続く。6位までの全ては日本の売上100位以内に入る企業である。ちなみに有名なダイヤモンドのデ・ビアス社はアフリカにおいて売上10位で、0.64兆円、ビール会社のサブミラー社は20位で売り上0.5兆円である。

一般的な日本人のイメージとして、アフリカ大陸においては規模の大きい企業はエネルギー、非鉄関連がほとんどと思われるかもしれないが、上述した通り、意外とそうでもない。50位以内に入る企業でも、通信、電力、リーテール、ゼネコン、海運、鉄道、保険、飲料、放送会社、製糸会社と多様である。ちなみに、50位以内の企業の国別は南アフリカが36社であり、モロッコが4社、エジプトが4社、アルジェリアが2社、アンゴラが2社、ナイジェリアが2社である。

ご覧の通り、アフリカ企業の規模はそれなりに大きい。これは10億の人口を擁し、巨大な市場を背景として、急速に成長している大陸の実態である。今後、アフリカ大陸は、着実に中間所得者が増え、企業の規模は拡大していくであろう。あくまで理論上であるが、あと10年経つと日本の売上100位に入るような企業が、現在の6社から、少なくても倍に増えるはずである。現在、アフリカ企業12位の南アのボーダコムの売上げは、日本の100位のJR西日本の約半分である。仮に7%の経済成長が続くと、10年後は2倍の売上になる。これは1961年に池田隼人首相発表した『国民所得倍増計画』と同じ考え方である。(ご参考までに2000年代のアフリカの平均成長率は5.6%で、世界平均の約2倍である。リーマンショックによるグローバル信用危機の中でも、着実に成長しているアフリカの姿がわかる。)

しかし感覚的にはアフリカの企業はもっと早く成長するのではないかと思う。推測であるが、10年後には日本の売上100位以内と同等の会社が3倍程度以上に増えるような気がする。企業は国民の所得増よりも早く成長するからである。まだガバナンス等もしっかりしていない企業が多く、上述したように国営企業も多い。今後、株式市場が発展して、資金調達が容易になれば、企業は子供のように早く成長すると思われる。

バブルのように弾けてしまうのは困るが、いずれにせよ、アフリカは紆余曲折を経ながらも、成長するのは間違いない。日本の皆さんには、『成長するアフリカに投資しませんか?』と改めて問いかけたい。


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