『アフリカの奇跡』とはケニアでマカデミアナッツの事業を起こした佐藤芳之氏の自伝である。24歳でアフリカに渡り、年商30億円規模のビジネスに育て上げたストーリーである。
1963年東京外国語大学を卒業した佐藤氏はガーナ大学に留学し、ケニアにて日系企業に勤務した後、マカデミアナッツ社を起業する。まだ宗主国から独立してから間もない頃のアフリカ大陸に単身で渡り、一から会社を立ち上げるということは、現在の感覚からは想像もできないほどの苦労があっただろう。そしてそれを二人三脚で支えた奥様の佐藤氏に対する真摯な助言と、ビジネスに対する洞察力は興味深かった。
『アフリカの奇跡』はケニアに訪問する際に熟読しようと日本から持参した本であるが、先週、その機会に恵まれた。そして、ケニア行きのエメレーツ便で同書に読みふけっていると、フライト・アテンダントがワインと共に暖かいナッツを運んでくれた。丁度、マカデミアナッツ社がエメレーツ便に同社の商品を納入しているとのフレーズを読んだ直後だったので、そのタイムリーな偶然に驚いた。確かにこのナッツは美味い。酒のつまみに最高である。
その後、ケニアの空港に到着し、ホテルの送迎車の中で、運転手から「Out of Africa」というパッケージに入っているナッツを提供された。製造元を見たところ何とマカデミアナッツ社の商品であった。運転手によると、ケニアの名産物の同商品を外国人に提供するのは『Welcome to Kenya』という意味合いであるという。隣に座っていた同僚のウガンダ人に対して『このナッツの会社は日本人が立ち上げた会社だぜ』と説明すると、同僚は驚いていた。日本人のアフリカにおける活躍が誇らしかった。
さて、私にとってはケニアは初めての訪問であり、同国は好印象であった。イギリスに統治された影響なのか、元来のものなのか分からないが、ビジネスパートナーでも、ホテルやレストランのサービスでもケニア人とは相手の気落ちをくみ取れる教養のある人々であると感じた。若干、そのあたりは、北アフリカよりもレベルの高さを感じた。また、公園や高級住宅街等の街並みは緑に溢れ秩序だっており、駐在するのであれば最高の国だと思った。しかし、治安が悪いのが若干気になるところである。
ケニア滞在中には、かつて日本で共に働いていた先輩に10数年ぶりに会い、旧交を温めたが、その先輩は佐藤氏をよく知っているという。改めて世の中の狭さに驚いた。先輩によると、現在、佐藤氏は会社の経営は後継者に託し、微生物技術を利用した水を使わないトイレのビジネスを手がけているという。マカデミアナッツ社において現地の雇用と福利厚生の拡充を最優先していた佐藤氏であるが、現在でもアフリカ人の為にソーシャルビジネスを目指しているようである。
ナイロビ国立公園にて |
私は、週末にその光景にふれるべく、ナイロビ国立公園にてキリンを観察しに行った。国立公園内で、車で探索すること1時間、やっとキリン一頭を見つけた。車のエンジンを切り、その様子を長く見守る。大草原にて、キリンが堂々として歩む姿は誠に優雅であり、まるでスローモーションのように時が流れる感覚に陥った。そして、あたりには涼しい風が吹き渡り、まるで日頃のせわしない生活により磨耗している心が洗われるようであった。
これこそが東アフリカの魅力なのであろうか。早くもその魅力に吸い込まれそうである。
0 件のコメント:
コメントを投稿