2013年12月18日水曜日

『グリーン革命』と『フラット化』~地熱発電~


トーマス・フリードマンが『グリーン革命』(英語名:Hot, Flat, and Crowded)を2008年に出版してから、既に5年以上の月日が過ぎた。グリーン革命とは、現在の化石燃料を使った社会システムを、クリーン燃料(太陽力、風力、水力、潮力、地熱)を利用した社会へ変革することである。

フリードマンは2006年に発行した『フラット化する世界』(英語名:The World is Flat)のベストセラーで名高い米国のジャーナリストであるが、その視点は鋭い。同書では、ITの飛躍的な発展により、インドや中国がグローバルな競争に参入している様子を描いた。この本で強烈な印象が残っているのは、アメリカのドライブインにて注文を受けつける機械からの声が、実はファーストフードの店員ではなく、はるか海を越えたインドにいるオペレーターのものであるというものであった。いかにコストを追求する為にグローバルリゼーションが進んでいるかを描いたものである。

余談であるが、当時、私はアメリカで学生をしていたが、授業の課題でこの『フラット化する世界』を読んだ。フリードマンの本の内容を確認するべく、ドライブインで注文する度にオペレーターに対して『ところで貴方はどこにいるのか。インドか?』とマイクに叫んでみたが、私の質問はことごとく無視されたことを覚えている。

そして、その後、米国ではリーマンショックが起こり、アメリカの金融業と不動産業は大きく後退した。『グリーン革命』が出版されたのはその頃である。グリーン革命とは、オバマ大統領が主張する「グリーン・ニューディール」に沿ったものであり、新たな産業と雇用を生み出すための呼び水であると言えよう。本の中では、中国とインドの台頭により、資源争奪戦がこれまで以上に激しくなりグリーン革命を遂行しないと豊かな生活が続かなくなることを強調している。

さて冒頭に述べた通り、この二つの本が出版されてからしばらくの年数が経ったが、世界は益々フラットになった。一つの例としては、現在、アフリカに住んでいる私であるが、世界中の友人とFacebookで繫がっている。数年前に今後しばらく会うことがないだろうと別れた友人達の食事の内容がアップされたり、飲み会の写真が映し出されたりする。あまりにもフラット化しすぎて少し距離を置きたい時もある。このブログも世界中の皆様が読んでいるようで、フラット化の恐ろしさを感じる。

一方で、あれほど強調されていたグリーン化は進んでいるだろうか。正直、飛躍的にクリーンエネルギーが増えたという実感はない。2011年3月11日に起こった東日本大震災によって、日本の全ての原発が停止したが、新たに増設した発電所はガスタービンが主であり、日本は貿易赤字を抱えるほど、化石燃料の輸入が急増した。また、ドイツやスペインにおいてはクリーンエネルギーの固定買取り制度が崩壊し、世界的に有名なソーラーパネルの数社が倒産に陥ったほどである。

理由は何故であろうか。フラット化と対照的にグリーン化は基本的にはコスト増であり、たとえ制度化したとしても多大な補助金を導入せざるを得ない。その脆弱性を露呈したのが、ドイツやスペインの固定買取り制度であろう。風力発電のようにコスト的に競争力がある発電も出てきたが、風力発電はベースロードではなく、補完する発電が必要となる。それは結局、最終消費者にコストが上乗せされるか、又は納税者が払う補助金で支えているに過ぎない。

さて、それでは、クリーンエネルギーの中で化石燃料を経済的に上回る発電方法は無いのであろうか。実は私は地熱発電がその数少ない手段であると思っている。

地熱発電とは、地下の熱源にて生成された水蒸気により、蒸気タービンを回すことによって発電する方法である。地下の熱源がボイラーの役割を提供しており、化石燃料を利用する必要がなく、二酸化炭素の発生が少なく、環境に優しい発電方式である。火山活動が多い国で主に活用されており、当然ながら日本もそれに該当する国であるが、大規模な利用に至っていない。最近では国立公園に関わる規制の緩和も進み、地熱発電の稼働に向け徐々に計画が進められているようだ。

ちなみに海外では地熱発電の利用が進んでいる。ケニアにおいても30年以上稼働している蒸気タービンがあり、今でも高い稼働率を維持しているという。ご参考までにケニアの地熱発電の固定買取価格(FiT)は米国ドル8.5セント/Kwhである。これは、3.5セント/Kwhの蒸気価格と5セント/Kwhの発電コストからなる。蒸気の発掘に関してはリスクの観点から無償資金や譲渡性の高い融資に依存している場合が多いものの、この発電コストは市場で十分競争できる価格である。しかもベースロードである。

実は地熱発電、特に大型の蒸気タービンは日本製が世界の市場を席巻している。上述したケニアの蒸気タービンも日本製である。また、日本製は蒸気によって発生する錆に強い工夫を凝らした金属や、蒸気と熱水を分離する際の細かい技術を擁しており他国のメーカーを圧倒しているようだ。

クリーンエネルギーの利用拡大には、日本の高い水準の技術が不可欠であろう。是非、日本の事業者やメーカーには世界的な『グリーン革命』の“フラット化”に寄与して欲しいと切に願う。

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