2013年5月31日金曜日

安倍政権の海外留学支援について

安倍政権は日本から海外に留学する学生向けの奨学金制度を拡充する方針を打ち出したという。その奨学金は秋学生に限定しているとはいえ、希望者全員を支給対象としており、大胆な支援策であるのは間違いない。

昨今、日本の若者が内向きになっていると言われている中で、政府が留学生の後押しをすることは良いことであろう。また、国際基準に合わせるべく、秋入学の導入を加速するということにも賛成である。

GDPの2倍もの国家の債務がある中で、留学制度にまで政府が支援する必要があるかという議論は当然にあるだろう。しかし、今後、日本が海外の市場に重きを置いているのであれば、留学制度を支援することは必要ではなかろうか。意味のない公共事業を行うよりは投資効果は覿面である。

それでは、この海外留学とはどのような形態になるのであろうか。少し考えてみたい。

まず、この奨学金の支援制度はワシントンで下村文部科学大臣が発表したことから、その受入れ先を米国に想定しているようである。この制度は、3月の高校卒業から大学入学9月までの半年間(ギャップターム)にて海外留学を希望する学生を対象としているという。

恐らく、対象の学生達は、まず3月から大学付属の語学学校に通い、6月に入って語学学校を継続するか、又はサマーコースの選択授業を受ける制度ではなかろうか。通常、アメリカの大学は3月頃は学部の受け入れは行わないが、6月からはサマーコースと言われる選択授業のコースを受講する事ができる。高校を卒業していれば、他大学や海外から訪問して6月から9月までの期間に選択授業を受ける事が可能である。

実際に、私もカリフォルニアの大学院の入学前は、同じキャンパスにある大学のサマーコースを受講することが出来た。私は簿記、統計学、英作文の授業を受けたが、他にも語学やリベラルアーツの授業もあり、その選択授業の数は豊富であった。当時、既に30代後半になっていたが、米国の20歳前後の大学生と机を並べて勉強した思い出がある。若作りしていたせいもあってか、誰も私のことをを気に留める学生はいなかった。

上述したように、私はこの政府の方針に基本的には賛成である。しかし、懸念すべきことは、この制度は勉学の意義とは別に、充分な国際交流が可能であろうか。まず期間が半年と短い。恐らく学生は大学のキャンパスの寮に入ることになると思われるが、日本人が大挙して押し寄せたりしたら、アメリカの学生と中々交友することが出来ないだろう。なるべく、日本人が居ないような片田舎に学生を分散するべきであると思う。また、留学先を米国に偏重しているが、途上国が世界の政治・経済において存在力を増している中で、正しい選択肢と言えるのか疑問に感じる。

それでは、仮に私がもし文部科学大臣であれば、留学支援に関して、下記のように提案したいと思う。

まず、留学期間を1年以上とし、高校時代や、大学の2年生や3年生時に、途上国向けの留学支援を行う。英語圏であれば、フィリピン、インド、パキスタン、マレーシア、ケニヤ、タンザニア、ウガンダあたりが対象国になるのではなかろうか。ギャップタームの米国留学の費用が数十万円程度とのことなので、途上国であれば1年間以上の留学支援が可能となる。海外で取得した単位を日本の高校や大学で認める制度も必要であろう。

次に、上述した制度を拡大する為に、現在、日本政府が国費外国人留学生として受け入れているあらゆる派遣国に対して、日本人の学生が無償で学べる交換留学制度を構築する。その派遣先はアジアのみならず、中東、中南米、アフリカを対象とする。英語圏のみならず、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、アラブ語、中国語、韓国語、ベトナム語圏等の受け入れ先を確保する目的である。語学のレベルにより、学部入学が難しければ大学付属の語学学校でもいいし、高校でもかまわない。現在、6000人の外国人学生が日本で学んでいるので、同等数の日本人の学生が途上国に行ければよいと思う。渡航費や生活費は個人負担でもかまわないのではないか。通常、生活費は日本よりもはるかに安いので、日本に住むよりも安上がりである。

これからの時代は異文化の人間とのコミュニケーション能力が極めて大切になる。国際感覚とは、外国人と同じ釜の飯を食べたというような経験をしないかぎりなかなか身につかない。時には屈辱的な思いをすることもあるであろう。若いころにそのような経験をしながら、異なる国の人々と時間を共有することが極めて大切である。これらの経験が大人になって必ず役立つ。

自らの経験でいうと、15歳の時に東京からオーストラリアのビクトリア州の田舎に1年間留学した時は、天地がひっくり返るほどのカルチャーチョックを感じた。ホストファミリーが営む牧場で、学校登校前の早朝に牛乳を採取した経験は忘れられない。現地の高校でも唯一有色人種であった。最初の半年間は、日本人に一人も会わなかったと記憶している。これらの経験が現在の海外生活を支えていると思っている。

今後の日本は先進国のみならず、途上国の人々に対して、物やサービスを提供し、飯を食っていかなければいけない。日本人が現地の会社を経営しなければいけない場面も増えてくるであろう。日本の成長は途上国の人々との付き合いが鍵になる。日本は未だに米国に偏重している傾向があるが、日本の学生があらゆる国に羽ばたいて有意義なネットワークを構築してもらえればと切に願っている。

【参考資料】
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0200Z_S3A500C1CR0000/

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