2012年9月14日に発生したチュニジアにおけるアメリカ大使館及びアメリカンスクールへの襲撃から、4か月以上が経ったが、あの時、何故このような暴動が起こったのか振り返ってみたい。
チュニジアにおける襲撃は、カリフォルニア州で作成された映画が『イスラム教の預言者を侮辱している』という大衆感情から火がついたことを述べた。しかし、これらの暴動の動きは、民衆により自然的に発生しただけではなく、指導者が扇動した結果であるということを指摘せざるを得ない。
9月14日(金)のアメリカ大使館襲撃の際には、暴徒化したデモが大使館内に侵入し、アルカイダの黒い旗を高々と掲げた。
9月14日アメリカ大使館 |
アメリカ政府と国連によると、ハッサンはアルカイーダの組織で長らく活動しており、2000年にTarek Maaroufiと共同でTunisian Combatant Group(TCG)を創設する。TCGはアルカイーダと協調路線を歩んでいたとされ、ヨーロッパにも活動拠点があったとも言われる。 国連のレポートによると、ハッサンは2001年9月11日の前にOsama bin Laden とAyman al Zawahiriと会っている事が指摘されている。現在でも同グループの最低5人はキューバのグアンタナモにて服役しているという。
ハッサンはベンアリ時代にはチュニジアで服役をしていたが、革命後、多くの政治犯と同じく釈放されてる。2011年4月、同氏はAnsar al Shariaという新たな組織を設立する。この組織の特徴は、ソーシャルメディアを最大に活用し、ブログ、Facebook、雑誌にて民衆にシャリアの正当性をアピールするこどである。同グループは2012年にケロワンにおいて全国会議を開催し、チュニジアのメディア、教育、観光や商業セクターがイスラム化することを呼び掛けている。9月14日の米国大使館襲撃以降、チュニジア政府はハッサンを指名手配しているが、アルジェリアとの国境に潜伏しているという噂もあり、未だに逮捕はされていない。イスラム過激主義派は近隣諸国で連携を取りあっており、ハッサンの存在は不気味である。
私は日頃、外国人との関係において、イスラム教徒の感情は、日本人の愛国心に似ていると思っている。様々な宗教が混在する日本と異なり、チュニジアは99%がイスラム教であり、一神教である。故に、イスラム教徒であることは、彼らのアイデンティティーそのものに他ならない。イスラム教が侮辱されることは、彼らのアイデンティティーが侮辱されることと同じである。故に、今回の映画で見られるようなイスラム教が冒とくされるような出来事が起きると、客観性が失われ、また、モスク内での集団心理で気持ちが高揚させられ、いとも簡単に扇動させられてしまうのかもしれない。
ベンアリ政権においては、チュニジアはイスラム過激派は抑え込まれており、非宗教(Secular)的な国家運営をしてきた。現在は連立政権の最大与党はイスラム教を支持母体としたエンナハダであり、穏健主義といえども、非宗教的な運営は望めない。宗教的に大きな揺れ戻しが来ていることは否めない。
9月の襲撃事件は、今後、チュニジアの経済に悪影響を及ぼすことは間違いない。チュニジアにおける民主主義の発展をも後退させた事件である。映画を作成した米国人と、大使館やアメリカンスクールとは全く関係がない。多くの若者が扇動者に操られた結果である。今振り返ると本当に残念でならない。
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