2013年2月25日月曜日

カサブランカ2 (中央市場)

本日、カサブランカの民衆の胃袋である『Marché Central(中央市場)』に訪問した。
その中央市場は高級ホテルや銀行が立ち並ぶ『Avenue de l'Armée』の 裏道に入ったところにある。カサブランカは商業地域と民衆の生活の場が隣接している町のようである。

私は様々な国に行く機会があるが、その国の中央市場に行くのが習慣になっている。単純にその国の食文化を見るのが楽しいからである。学生時代のバックパッカーだった頃は中央市場に行けば、安く美味しい料理が食べられるからということもあった。『食べ物は人を幸せにする』ことには誰も異論がないであろう。ワタミの渡邉美樹会長が、食の分野で起業をしたのも、学生時代に世界各国を旅行して、食が人に与える幸せを認識したからであると本で読んだことがある。
ガイドブックも地図も持参せず、通りの人に道を聞きながら、ホテルから歩いて10分。あまりの近さに少し落胆した。『港町の旅は冒険に満ちてるべきである』からである。意外性のない旅はつまらないと学生時代に戻った気分になった。
中央市場の大きさは、日本の一般的な小学校の運動場の広さくらいであろうか。チュニスの中央市場と比べるとその規模は大きくない。週末であるが、既にお昼を過ぎていたので、人もまばらである。観光地らしくフランス人やスペイン人の観光客がカメラを持ちながら見にきていた。
市場に入るなり魚売場が目に入った。魚屋は、青空店舗で4~5店あったが、種類は豊富であった。Daurade(鯛)、Loup(スズキ)、Merlan(ホワイティング)、Espadon(メカジキ)、Salmon (サーモン)、Sardine(鰯)、Sole (舌平目)Crevette Royale(王様海老)、Carmar(ヤリイカ)等が豊富に並ぶ。更にあまりチュニジアでは見ないLangouste(欧州伊勢海老)もあった。さすが、地中海と大西洋を結んでいる国である。短期間の滞在でなければ、買い物をしたいところである。
少し市場の中に進み、牡蠣(huître)専門店に出くわした。牡蠣の大きさが目を引く。日本の倍ぐらいはあるのではないか。1個で10DM(約110円)はお得であろう。

店の人にレモンと共に試食を薦められたが断った。牡蠣は大好物であるが、10年近く前に、ハノイに出張した際に酷い目にあったからである。ハノイのSofitelホテルの朝食ビュフェに生牡蠣が並んでおり、誘惑に負けて食べたのが運の尽きであった。当初、不調の原因が不明で、奇病にかかったと思い、体のだるさと気持ち悪さでこのまま死ぬのではないかと思ったほどである。翌日の帰国の飛行機の中では、文字通り、のた打ち回り、這うようにして自宅に戻ったのを覚えている。それ以来、出張の際には生牡蠣は絶対に食べない。
そして、生唾を飲み込みながら、後ろ髪が引かれるように、牡蠣の専門店を後にし、市場の中心の肉屋の店舗群に向かった。肉屋が10店舗程あったが、牛肉屋のみならず、馬肉屋も一軒あった。馬を食べる習慣があるのはチュニジアと同じようである。ちなみに値段を聞いてみたが、牛肉のランプ(尻部分)は110DM(約1200円)/Kgで、馬肉のランプは60DM(約660円)/Kgであるという。馬肉の方が希少なのに値段が安いとは意外であった。更に鶏肉屋に行き、値段を聞いてみたが、馬肉の半額以下であった。鶏肉が安いのは万国共通のようである。当然ながら、豚肉屋は存在しない。ここはイスラム国であり、豚を食べるのはハラーム(禁止)であるからである。
その他、生鮮野菜屋、果物屋、豆やスパイス店、花屋等を見た後、市場内の食堂に向かった。好物の魚スープを頼んだが本日はないという。落胆したが、魚のフライ定食を薦められた。中身はCrevette(海老)、Melran(ホワイトニング)、Sole(舌平目)のセットである。 Merlanは文字通りの白身魚であるが、肉のボリュームがあって美味しかった。サラダとパンも含めて値段は60DM(660円)程度であるという。物価はチュニジアより若干高い気がした。
中央市場を出て、場外に数件並ぶレストランを見てみた。ある店の店外メニューを見たが、何と『パエリャ』があるではないか。さすがにスペインの対岸の国である。中央市場で昼食を済ませたのを後悔した。チュニジアではパエリャを提供する店に出くわしたことがない。滅多に無いチャンスを逃してしまった。しかし、かつてのように、昼飯を2回食べるほど胃袋は強くもない。
学生時代にバレンシアに滞在した時のことを思い出した。その際には1週間に4回はパエリャを食べていた。バレンシアはパエリャの発祥の地である。春休み中、語学学校に通っていた私の所に、卒業旅行で欧州を回っていた兄が遊びに来てくれ、二人でパエリヤの店に行った。サングリアで酔いながらも、兄がサルテンに付いていた焦げの部分をスプーンで掘り起こし、綺麗に平らげたを思い出した。よく妻に『どうしてお義兄さんは綺麗にご飯を食べるのに、貴方は食べ物を残すの。』と文句を言われるが、その頃から習慣が変わっていないことに今になって気がついた。
スペインに訪問してから、22年の年月が経ち、ようやく訪問できなかった対岸のモロッコに来ることができた。当時は遥か遠い国であったが、まさか、近隣国に住むことになろうとは夢にも思わなかった。まさに人生とは判らないものである。
人は風雪の時と共に変わるといわれるが、一方で人の基本的な気持ちはあまり変わらないということも事実である。束の間であるが若い頃のバックパッカー気分に戻り、心が躍った日であった。機会を与えてくれたモロッコに感謝したい。

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